「すまいる」2021年3月号
板橋区子育て支援事業板橋区子育て支援者・支援員通信誌第83号
【3月号の内容】
(以下、目次部分をクリックしていただければ、内容を閲覧できます)
昨年の1月からコロナと言う言葉を目にするようになりました。
この1年のサポートステーションでは延期、中止の言葉が繰り返し話し合われました。
しかしサポートステーションをクローズする事なく、『すまいる』も休む事なく皆さんへお届けする事ができました。コロナ禍の状況で、皆さんへのボランティア情報をお知らせすることができませんでした。したがって『すまいる』でのボランティアレポートの掲載もありませんでした。
スキルアップ講習会は中止となり、年間5回行っていた地域別交流会を、合同地域別交流会として1回の実施となりました。この様な状況をスキルアップ講習会の講師をお願いいたしました先生方へはご理解を頂きました。そして今回は、先生方から皆さんへ現在の状況下のそれぞれのテーマにて『すまいる』への掲載となりました。先生方へは感謝申し上げます。
合同地域別交流会はコロナ禍での実施でしたが、参加頂きました皆さんからのコロナ禍での現状からお孫さんと遊ぶ時間が増えた方や、コロナ禍で仕事を休んでいる方のお話をお聞きできました。参加者の皆さんも、サポートステーションのスタッフも直接お会いしての交流会はやはり充実した時を共有できました。勿論コロナ禍での開催にて充分な対策はとり開催しました。
上記のようにな 1年間のサポートステーションのスタッフはいろいろな事に直面しました。
そして今出来る事を誠実に行い、辛抱の時こそ自分たちを磨き、次への準備をし、板橋区の子育て支援へ関わっていただける事へ感謝しております。
with コロナの今ですが、サポートステーションはこれからも板橋区の子育て支援者、支援員の皆さんへ区内の子育て支援情報をタイムリーにお伝えしてまいります。
春日 明夫(芸術学博士,東京造形大学名誉教授,実践女子大学非常勤講師)
2020年の春、新型コロナウイルスで世界が止まりました。現在も感染者数の増加と減少を繰り返すだけで一向に収束の兆しは見えず、もう1年間も不安な状態が続いています。それでも世界は再び動いています・・。私は昨年の大型クルーズ船のコロナ感染が報道された2月2日、ちょうどその日から今日までの1年間余り、6歳と4歳の孫二人と造形遊びや造形工作をずっと一緒に楽しみ、今でも継続しています。孫との造形遊びや工作を行うようになった理由は、コロナ感染症の非常事態宣言によって、孫の通っている保育園が休園になったことが発端です。つまり、一次的に両親に変わって子育ての手伝いをしたことからです。また、2年前に21年間勤務していた大学の専任教授を定年退任しましたが、その少し前から定年後の第2の人生に向けて考えていたことがありました。それは、今後は特に“キッズ&シルバーの造形活動”に取り組んでみたいという新たな思いです。私はそれまで40年以上に渡って幼児や児童、生徒や学生に対して造形教育や子ども向けワークショップの指導や実践、さらに創作玩具の研究を行ってきました。そして、定年退任したことが大きな契機となり、少子高齢化や社会福祉の現実問題により目を向けるようになりました。そこで、自分がこれまで長年研究してきた内容や様々な経験値を何とか一般社会に還元できないものかと考えたのです。そんな思いや考えが根底にあったからこそ、それがコロナ禍で孫との造形遊びや工作を継続的に行っている動機の一つになりました。
私は現在も名誉教授という立場から非常勤講師として勤務しています。さらに、実践女子大学の幼児保育専攻で造形活動の演習授業を教えています。この学生達は、将来保育士や幼稚園教諭を目指す熱心な学生の集まりです。私は44年前の学生時代、八王子市のある保育園で造形指導の非常勤講師をしたことがありました。定年退任後にご縁があり、私の教育活動の原点ともなっている幼保のための教育や活動に再び関わることになりました。上述してきたように、このような様々な経験値を生かし、AIの時代、さらにコロナ時代において健やかな子育てを行うために、造形遊びや工作の素晴らしさを一般社会により広めていくことが自分の果すべき役割の一つだと思っています。
子どもを“造形活動から多面的に理解する”ことの重要性
子どもの遊びや遊び道具は多種多様です。私たち大人は、ついそれらが子どものためになると思い、一方的な大人目線、例えば先入観や固定観念などで判断してしまう傾向があります。しかし、本来子どもは誰もが自ら育ち、自ら生きようとする潜在的な能力が備わっています。つまり、それらの能力は生きる力の源です。そのような能力を大人が無視したり忘れたりして、頭ごなしに大人が良いと思う遊び方などを教え込んだり、遊び道具を与えたらどうでしょうか。私たちは、年代に関係なく何かを得たい、知りたい、学びたいという本能的な内的欲求をもっています。その欲求を遊びや造形活動を通して満たしてあげること、それこそが大人が子どもに対する健やかな成長のための支援につながります。
そのためには、子どもの遊びや造形活動の過程における新たな発見が大切です。それは創造性が成立するための芽生えでもあります。その過程におけるポイントとは、自分にどれだけ楽しいことが発見できるか、そして夢中になれるかに尽きます。そして、子ども自身が何かをよく見て、感じて、気づいて、発見して、考えて、理解して、工夫するという学びの基礎・基本を大人が設定してあげることです。さらに造形活動においては、そこに自分らしく表すという表出や表現行為が加わります。以上のことから、造形遊びや造形工作には、そのような基礎・基本の要素がたくさん詰まっています。孫たちのより良い健やかな成長を願って、コロナ禍の1年間に50種類以上の造形遊びや工作を行ってきました。その詳細や具体的な事例については、来年度など、機会があればぜひ直接皆さんの前でお話しさせていただき、そのことが少しでも子育て支援の参考になればと願っています。
心身障害児総合医療療育センター 小児科 山口 直人
■子どもの新型コロナウイルス感染症について今のところわかっていること
日本や世界中からの報告によると、子どもの新型コロナウイルス感染症には以下の特徴があるようです。
▪大人に比べるとだいぶ感染しづらい
▪感染しても症状が出ないことが多い
▪症状が出ても軽いあることがほとんど
▪川崎病のような症状が出ることがあるようですが、日本ではほとんどない
もちろん不必要な感染は避けたいのですが、「子どもは実際感染してもだいたい大丈夫」と言える状況のようです。しかし、以下のようなことから「大丈夫!」と言って済ませられるほど簡単な状況ではありませんでした。
▪大人、特に高齢者では非常に重い症状になることがある← 子どもは大人と生活している
▪感染することに対する偏見・差別(スティグマ:烙印や汚名という意味)と、自分も差別を受けるのではないか、という不安
▪これまでの多くのウイルス感染症では子どもたちが感染しやすく、重症化しやすかった
結果として、子どもたちとその親の行動は大きく制限され、感染症よりも、制限による子どもたちやその親の健康の問題が生じています。
▪妊娠中クラスが開かれないまま、面会制限の非常に大きい施設で出産している
▪情報の届きにくさや、外出へのなんとなくの不安から健診や予防接種に出かけないことがある
▪親たちの出会いの場、地域の居場所がことごとくお休み
▪外出へのなんとなくの不安から、散歩や公園遊びなどの発達に必要な外出も減っていることがある
▪ステイホーム・テレワークで親子・家族が共に過ごす時間が長いのは家庭により良し悪し
▪子どもたちにはマスク・フィジカルディスタンス・3密を避けて遊ぶといったことが難しい
新型コロナウイルス感染症を近くに感じる生活が1年になりますが、不便な生活に多少慣れた一方で、感染症に対して安全・安心を手に入れるのはもう少し先になりそうです。感染症対策のためにいったん大きく止めた子育て支援の働きが、いま感染症以上に子どもたちやその親に影響を及ぼしています。地域の宝、地域を支えていく子どもたちのために、それぞれ自分の環境でできそうなことを少しずつ考えていきたいです。支援者向けのパンフレットを作っている団体がありました。参考としてご紹介します。
◎白百合心理・社会福祉研究所 COVID-19 対応 子育て支援者向けパンフレット
https://shinsei-kai.org/sri/llink/
■新型コロナウイルスと共に過ごす社会での子育て支援に取り入れたいこと
●スティグマ(汚名・烙印)に立ち向かう
親子と同じように、私たちも大きな不安の中にいます。読んでいる方の中には、感染予防のためにたくさんの努力をしたり、犠牲を払ったりしている方もおられることでしょう。一方でどんなに予防に努めてもウイルスに感染する可能性はゼロにはなりませんし、予防への取り組みができる範囲も人それぞれで幅があり、どれが良くてどれが悪い、と言い切れるものではありません。
少しの態度や言葉の工夫で心配な気持ちをスティグマや差別・偏見に変えることを避けることができます。以下の資料をぜひ見てください。
◎ユニセフ COVID-19 に関する社会的スティグマの防止と対応のガイド
https://www.unicef.or.jp/news/2020/0096.html
◎国立成育医療研究センター 新型コロナウイルスと子どものストレスについて ⑩学校に通う君たちへ
https://www.ncchd.go.jp/news/2020/20200410.html
■子どもたちに「かかっても大丈夫」というメッセージを出す
子どもたちは日々の情報や生活から、「コロナというのは、感染したらどうやら大変なことらしい」というメッセージをたくさん受け取っています。確かに大変なことなのですが、子どもたちは無症状や軽症で、必ず回復して良くなります。医療機関もついています。「感染したら大騒ぎになることはあるかもしれないけど、それでもあなたは大丈夫だし、悲しいかもしれないけど悪いことではないんだよ」というメッセージを親子に繰り返し伝えたいです。
■大人も子どももリラックス
とはいえ、実際感染したら面倒ではあるだろうし、日々の報道などを目にすると心配や不安、ストレスがたくさんの気持ちになることは無理もないことです。
状況は変わらなくても、精神的なストレスレベルを自分でモニタリングしたり、自分でできるストレスレベルを下げる、リラックスする方法を知っておくことは役に立つことがありますし、一緒にやってみるなど支援の場でも伝えやすいです。簡単なことですが以下の資料にまとまっています。ぜひお試しください。
◎国立成育医療研究センター 新型コロナウイルスと子どものストレスについて
https://www.ncchd.go.jp/news/2020/20200410.html
■感染対策 基本の感染対策を確認しましょう
多くの生活行動と同じように、子どもたちは少しずつ学んでいきます。完璧な行動を求めるようなことはせず、練習中と思って見守り励ます姿勢が重要です。親がプレッシャーを感じている場合も多いので、完璧でなくても良いことをお伝えしていきましょう。
▪手洗い・手指消毒…子どもたちにはお手伝いが必要です やり過ぎによる肌荒れに注意しましょう。
▪マスク………………2歳以下の子どもには使用を勧められていません。3歳以降もまだ着けることの練習中ですので、完璧を求めず、着けていることを褒めましょう。
▪3密を避ける………3密(密接・密集・密閉)は避けましょう。子育てや発達に必要な密(触れ合って一緒に遊ぶなど)が必ずあるので、そのために他の密を減らしましょう(密閉を避けて換気の良い環境・密集を避けるなど)
▪子どもたちを感染症から守るために、大人が感染しないことが効果が大きいです。
自分を大切にしましょう。
※重要なおことわり※
新型コロナウイルス感染症についてはまだわかっていないことがたくさんあるため、この記事は作成時点 (2021年2月)での情報に基づいています。
横田さんは2回目の「すまいる」登場となります。横田さんは一つの保育園で、ボランティア活動を12年間されています。今回、保育園の園長先生の推選により長年社会福祉の推進に貢献された功績が認められ、東京都より感謝状が授与されたと伺いました。地域に根ざした貴重なボランティア活動を長年続けておられ、「横田のおじちゃん」と園児達に親しまれています。仲良しになって卒園していった子ども達も多数。何よりも子どもと遊びたい、ボランティア活動が生きがいだとおっしゃっています。支援者横田さんの子どもにかける情熱に頭が下がります。おめでとうございました。
Q:子育て支援者・支援員養成講座受講の動機は?
A:仕事を離れてから、本棚に眠っている絵本・漫画・民話集・希少な明治から昭和初期の児童文学書(復刻版)など400冊ほどを整理(用意)し、自宅に子ども達との遊び場をつくる計画を進めていましたので、「孫や近所の子ども達と一緒に遊べる機会が得られるのでは?」と思って受講しました。
Q:受けてみての感想は?
A:参加者の多くが乳幼児の子育てが終わった若いお母さん方で、2級の取得を目指している方も多く、子ども達との遊びを目的とした受講は私の勘違だな!と思ったのが第一の感想です。したがって、受講申請時にも、また受講中にも辞めなければと思いましたが、先生や周りの受講生に励まされて(説得?手をひかれ)何とか続けられたなとの思いです。授業の予習復習等を通じ遠く忘れていた学びの精神(学生気分)を思いだしたり、児童館で小学生と宿題や卓球の相手になった実習などとても楽しい時間でした。手遊びや遊戯の授業はどうにも照れくさいのと、子どもの頃にやったことが無いので汗をかきかき皆さんの真似をして、家に帰って疲れたあ~、という思い出が残っています。
総じて楽しく、受講して良かったと思っています。
Q:今回受賞された12年間のボランティア活動のきっかけは?
A:直接的には受講したことによりますが、子どもが好きなこと、学生時代の思い、阪神淡路大震災直後の子ども達との出合等によります。
Q:どのようなボランティア活動をされていますか(内容・回数)?
A:「内容」は少しずつ変わりましたが、園児との遊び、散歩、食事、工作、昼寝のサポート等に参加してきました。お誕生日会に希望する折紙を折って贈ること、卒園児の一年間の記録を卒園記念に贈ることを活動のひとつにしています。
朝のご挨拶前と、昼食後の自由時間に折紙やゲームをして遊びますが、ゲームでは「ずるーい」などと、ときには負けまいとする本気度を示します。ぶどう組(年長組)のお昼寝がなくなる12月からは、お昼寝の時間に「なまえ」・「ひらがな」の練習、切り絵などをして遊びます。
工作は身近にある材料を使います。はじめに実物の紹介や動作原理を説明します。例えば、風力自動車を作るときは、「帆船」や砂浜で走る「帆かけ自動車」のイラストを見せ、動作原理を説明します。次に、工作の見本を紹介してから作ります。厚紙で作った車輪・帆・台車等の部品を配り、車軸に使う「竹ひご」で突いたり、怪我をしないように注意をして作り方を説明し、後は自由に製作してもらいます。
「回数および時間」は、週3日(月・火・水曜日)で9:00頃(園児の登園がほぼ終わった頃)からお昼寝につく(13:30頃)まで。年長組の昼寝がなくなる12月以降は、おやつが運ばれる(14:30頃)まで。
Q:子ども達との思いで!
A:卒園児に声をかけられたとき何とも言えぬうれしさを感じたり、みなきちんと挨拶ができるので感心したり。ある日三人の小学生が近づいてきて、「おじちゃん、今日はご無沙汰しております。」と丁寧にご挨拶をされたときは戸惑と面はゆさを感じたり。新卒園生が五月の早い時期に公園でばったり会って、「保育園は良いよね」と話しかけられ、あれ、どうしての問いに「だってさ、保育園は勉強もないしぃ~、宿題もないしぃ~、ねぇ~、遊んでいれば良いんだものね!」小学生になると勉強大変だね!「大まじめに、うん!」といってかけだした後ろ姿に思わず吹きだしたこと等々。また、何事でも(ボールひとつ蹴っても)上手くヒットしたときの 得意顔、工作が完成したときの達成感と満足そうな顔、遊びの中で思わぬ 個性を発見し驚かされたり、感心させられたり、みな良き思い出です。
3才になると急に「お兄さんお姉さん」になるようですが、迎えのママの顔を見ると、たちまち赤ちゃんに戻っちゃう光景もほほえましい思い出の一つです。
Q:ボランティアを長く続けられた思い(コツ)は?
A:長く続けるための「何か」や「コツ」といったことを考えたことはありませんが、孫と遊んでいるのと一緒で「楽しい」と言うことが一番だと思います。私は、理系で個を主体とする職場に長く携わっていたこともあって、大人と話すのが不得手であると思いこんでおり、子ども達と接している方が肩肘張らずに素直にしていられ、問いかけにも素直に帰ってくる安心感。退職で組織(社会)を離れしがらみのない保育園児を通じ、ささやかに社会とつながっていることがとても居心地が良かったのです。また、工作の題材を考えるのが楽しく、没頭する時間を持てたのも一因かも知れません。例えば、笛を作るとき音階の作り方を勉強したり、ロケットはどうして飛べるのか、子どもにどのように話せば伝わるか等あれこれ思案したり、身近な材料、容易に手にできる材料、作って終わりではなく遊べるもの、集中力と頑張りも大事な要素と考えているので、頑張れば出来るけれどチョット難しいかなというレベルまで、何処まで準備とお手伝をしたらよいかな?等々と考えている内に時が過ぎてしまったということです。
何よりも子どもと遊びたいからだと思います。
Q:横田さんが考えているボランティアとは?
A:ボランティアとはなんぞやと考えたことはありませんが、これまで生きてきた過程で両親をはじめ友人・知人・社会から受けた有形無形の恩恵のささやかな社会への還元の一つと考えています。